前田 芳信
Yoshinoubu Maeda
経歴
- 1981年
- 大阪大学助手(歯科補綴学第二講座)
- 1984年
- 大阪大学歯学部附属病院講師(第二補綴科)
- 1987年
- 文部省在外研究員 カナダ、ブリティッシュコロンビア大学
- 1994年
- 大阪大学歯学部助教授(歯科補綴学第二講座)
- 1997年
- 大阪大学歯学部附属病院教授口腔総合診療部初代部長
- 2007年
- 大阪大学大学院歯学研究科教授(顎口腔機能再建学講座有床義歯補綴学分野)
- 2014年
- 大阪大学歯学部附属病院 病院長(平成28年3月まで)
- 2017年
- 大阪大学大学院歯学研究科 特任教授 名誉教授
- 2022年
- 大阪大学大学院歯学研究科 招聘 名誉教授
医療法人サラヤ健育会 理事長
日本補綴歯科学会(指導医、専門医)
日本口腔インプラント学会(指導医、専門医)
日本スポーツ歯学医学会 (理事、指導医)
はじめに
1977年大阪大学歯学部卒業、2014年大阪大学歯学部附属病院長を歴任し、2017年に大阪大学大学院歯学研究科特任教授・名誉教授となった前田芳信先生。日本補綴歯科学会指導医・専門医、日本口腔インプラント学会指導医・専門医として、40年以上にわたりインプラント治療に携わってこられました。
病院長として多くの医師を見てきた経験、そして補綴学の専門家として「噛む機能」を追求してきた視点から、前田先生が考える「インプラント名医」の条件とは何か。患者が後悔しないために知っておくべきことは何か。率直に伺いました。
インプラント名医の真の定義
――技術だけでは不十分
――前田先生が考える「インプラント名医」とは、どんな医師でしょうか?
40年以上、大学病院でインプラント治療に携わり、病院長として多くの医師を指導してきた経験から言えるのは、「名医」とは、技術が高いだけの医師ではないということです。
私が考える「インプラント名医」の定義は、次の3つの条件を満たす医師です:
患者に「やらない」選択肢も示せる医師
これが最も重要です。技術的には可能でも、その患者さんにとってインプラントが最善ではない場合があります。
例えば、全身状態が悪い患者さん、極度に骨が少ない患者さん、経済的に大きな負担になる患者さん——こういった場合に、正直に「今はインプラント治療を勧めません」と言える医師こそが、真の名医です。
商業主義に走らず、患者の利益を最優先する。これができない医師は、どんなに技術があっても名医とは言えません。
「その後」を考えられる医師
インプラントを埋入することは、ゴールではなくスタートです。患者さんは埋入後、10年、20年、30年とその歯を使い続けます。
- 咬合(かみ合わせ)は適切か
- メインテナンスは容易か
- 将来、介護が必要になった時に対応できる設計か
- 患者さんの経済状況で長期的に維持できるか
こうした長期的な視点を持つ医師が名医です。日本補綴歯科学会指導医・専門医のような資格を持つ医師は、こうした「その後」を考える訓練を受けています。
複数の選択肢を提示できる医師
「インプラント治療」と一口に言っても、方法は様々です:
- 固定式のインプラント
- 取り外し式のインプラントオーバーデンチャー
- 天然歯とインプラントの組み合わせ
- 義歯のみの治療
患者さんの年齢、全身状態、経済状況、価値観によって、最適解は異なります。画一的な治療を押し付けるのではなく、複数の選択肢を丁寧に説明できる医師が名医です。
匠インプラントで推薦する医師の具体的な基準
――「匠インプラント」で医師を推薦される際、具体的にどのような基準で選ばれるのですか?
私が医師を推薦する際の基準は、非常に明確です。以下の5つの条件を全て満たしている医師のみを推薦しています。
【基準1】
学会認定の専門医資格を複数持っている
日本口腔インプラント学会指導医・専門医はもちろんですが、それだけでは不十分です。
私が重視するのは、日本補綴歯科学会の指導医・専門医資格も持っているかどうかです。なぜなら、インプラントの最終的な成功は「補綴(被せ物や義歯)」の質で決まるからです。
船に例えるなら、エンジン(インプラント)だけ良くても、船体(補綴)が悪ければ沈みます。両方の専門性を持つ医師を推薦します。
【基準2】
大学病院や研究機関での経験がある
なぜ大学病院の経験が重要か? それは、難症例に対応する訓練を受けているからです。
開業医では遭遇しにくい、骨が極端に少ない症例、全身疾患を持つ患者さん、他院で失敗した症例——こうした難しいケースを数多く経験している医師は、判断力が違います。
大阪大学歯学部附属病院で長年診療してきた経験から、大学病院レベルの訓練を受けた医師を推薦しています。
【基準3】
「できない」と正直に言える医師
これは技術の問題ではなく、人間性の問題です。
患者さんのために最善を尽くすなら、時には「私ではできません」「今はすべきではありません」と言う勇気が必要です。
全ての症例を引き受ける医師ではなく、患者さんのために断る勇気を持つ医師を推薦します。
【基準4】
エビデンス(科学的根拠)を重視する医師
学術委員会委員長として学会活動に携わってきた経験から言えるのは、学会で最新の知見を学び続ける医師が信頼できるということです。
「自分の経験だけ」に頼る医師は危険です。最新の研究成果を学び、エビデンスに基づいた治療を行う医師を推薦します。
【基準5】
患者とのコミュニケーションを大切にする医師
説明が丁寧で、患者さんの不安や疑問に真摯に答える医師。専門用語を使わず、わかりやすく説明できる医師。
技術があっても、コミュニケーション能力が低い医師は推薦しません。なぜなら、患者さんが納得して治療を受けることが、最も重要だからです。
患者がインプラント治療で後悔しないために、今伝えたいこと
――これからインプラント治療を検討している患者さんに、最も伝えたいことは何ですか?
40年以上の臨床経験から、患者さんに伝えたいことは3つあります。
「安さ」に騙されないでください
近年、価格競争が激しくなり、「1本◯万円」といった広告をよく見かけます。しかし、安いには理由があります。
- 使用するインプラントの品質が低い
- 術前診断が不十分
- メインテナンス体制が整っていない
- 経験の浅い医師が担当している
船の航海で、安い船を選びますか? 命を預ける治療だからこそ、価格だけで選んではいけません。
「取り外せる」選択肢も考えてください
多くの患者さんは「固定式」を希望されます。確かに、取り外し不要は便利です。しかし、人生は変化します。
- 将来、介護が必要になったら?
- 手が不自由になって、口腔ケアが難しくなったら?
- 経済的に維持費が負担になったら?
こうした将来を見据えると、取り外しできるインプラントオーバーデンチャーという選択肢も、非常に価値があります。
目先の便利さだけでなく、10年後、20年後を考えて選んでください。
複数の専門医の意見を聞いてください
インプラント治療を検討する際、最低でも2〜3人の専門医に相談してください。そして、その中に必ず日本補綴歯科学会の専門医を含めてください。
なぜなら、外科医は「埋入できるか」を重視しますが、補綴医は「その後、快適に使えるか」を重視するからです。両方の視点があって、初めて最適な治療計画が立てられます。
そして、各医師の説明を聞き比べてください:
- 「できる」ことばかり強調する医師
- リスクやデメリットも正直に説明する医師
後者を選んでください。都合の良いことだけ言う医師は、信頼できません。
最後に
――名医とは、患者の人生を守る医師
――最後に、患者さんへメッセージをお願いします。
大阪大学歯学部附属病院長として、多くの医師を見てきました。技術が高い医師は たくさんいます。しかし、患者さんの人生を本気で考えている医師は、実は多くないのが現実です。
インプラント治療は、あなたの人生を豊かにするための手段です。しかし、間違った医師を選べば、人生を台無しにするリスクもあります。
名医とは、技術が高い医師ではありません。患者さんの人生を守る医師です。
- 「やらない」選択肢も示してくれる
- 10年後、20年後を見据えた提案をしてくれる
- 複数の治療法を丁寧に説明してくれる
- デメリットやリスクも正直に話してくれる
- 患者さんの経済状況も配慮してくれる
こういう医師を選んでください。そして、焦らないでください。一生使う歯のことです。時間をかけて、信頼できる医師を見つけてください。
あなたの笑顔と健康を守るために、真の名医と出会えることを願っています。
まとめ
――名医選びの5つのチェックポイント
前田先生のお話から、「インプラント名医」を見極める5つのチェックポイントが明確になりました。
- 専門医資格:日本口腔インプラント学会と日本補綴歯科学会、両方の専門医・指導医資格を持つ
- 大学病院経験:難症例の経験が豊富で、高度な判断力を持つ
- 誠実さ:「できない」「やらない方が良い」と正直に言える
- 選択肢の提示:固定式だけでなく、オーバーデンチャーなど複数の選択肢を示せる
- 長期的視点:埋入後の10年、20年を見据えた治療計画を立てられる
メリットは、こうした基準を満たす医師なら、技術面だけでなく人間性や倫理観も信頼でき、長期的に安心して治療を任せられることです。また、患者一人ひとりの状況に応じた最適な治療を提案してもらえます。
デメリットは、これらの条件を満たす医師は限られているため、見つけるのに時間がかかる場合があることです。しかし、一生使う歯のことですから、この時間は決して無駄ではありません。