大人の方が歯を失う原因のトップは歯周病です。
歯周病になると歯の周りの骨が溶けてしまい、やがて歯が支えられなくなり、歯が抜けてしまいます。
実は、インプラントにも同じような病気があり、それをインプラント周囲炎と呼んでいます。
インプラント周囲炎になると、インプラント周囲の骨が溶けて無くなっていくので、放置しているとインプラントを取らざるを得なくなります。
いわば、インプラントの大敵とも言えるインプラント周囲炎について、解説します。
インプラント周囲炎について
まず、インプラント周囲炎についてです。
インプラント周囲炎とは
インプラント周囲炎は、インプラント周囲の骨や歯肉に起こる炎症性の病気の総称で、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎に分けられます。
インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎の違い
インプラント周囲粘膜炎は、インプラントの周囲の歯肉に腫れや出血などの炎症は認めるけれど、骨がほとんど減っていない状態です。
インプラント周囲炎の初期段階といえます。
インプラント周囲炎は、インプラントの周囲の骨に明らかな現象が認められる状態です。
インプラント周囲炎は、インプラント周囲粘膜炎から始まり、インプラント周囲炎に発展します。
インプラント周囲炎が悪化すると、最終的にはインプラントの周囲の骨が吸収されてなくなり、インプラントが抜けてしまいます。
インプラント周囲炎の治療法
インプラント周囲炎の治療法は、インプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎で異なります。
インプラント周囲粘膜炎
インプラント周囲粘膜炎は、骨に異常がない状態なので、その治療は歯肉の炎症を抑えることが中心になります。
そこで、ご自宅でご自身で歯磨きがきっちりできるよう、歯磨きの仕方の練習や適した歯磨きグッズの紹介、インプラント周囲のポケットの洗浄やインプラントのクリーニングを行います。
インプラント周囲炎
インプラント周囲炎の治療法は、”インプラントのクリーニングと歯石除去””殺菌剤による洗浄””抗菌薬の投与””外科治療””除去”の5つです。
これらの中から、インプラントの周囲の骨のダメージに合わせて、適切なものを組み合わせて治療が進められます。
最も軽症な段階では、インプラントのクリーニングと歯石除去”だけですが、最終的な段階にまで進んでしまうと、”除去”が選ばれ、インプラントを取り除きます。
インプラント周囲炎の予防法
インプラント周囲炎の予防法を紹介します。
インプラントのケア
まずは、インプラントのケアです。
プロフェッショナルケア
プロフェッショナルケアは、歯科医院で受けるインプラントのクリーニングです。
PMTCとよばれる専用の研磨剤を使ったインプラントのクリーニング、スケーリングという歯石除去に加え、ご自宅でインプラントをきれいに保てるよう、歯磨きの方法の説明も行います。
セルフケア
セルフケアは、ご自宅でご自身で行う歯磨きで、インプラント周囲炎の予防の基本とも言え、たいへん重要です。
毎食後、歯ブラシで表面を磨くだけでなく、歯間ブラシも使い、インプラントのサイドまできれいに磨くことがセルフケアのポイントです。
インプラント周囲炎のリスクファクターのコントロール
インプラント周囲炎を引き起こす可能性があるリスク要因をなくすようにコントロールすることも、インプラント周囲炎を防ぐためにとても大切です。
歯周病
実は20歳以上の日本人の多くがすでに歯周病にかかっており、そのうちの1割ほどが重度な歯周病になっていると言われています。
現在歯周病になっている、もしくは過去に歯周病になっていたという方と、そうでない方を比べてみると、インプラント周囲炎は前者の方に多くみられます。
歯周病患者では、インプラント周囲炎が歯周病でない方の4倍も認められたという調査結果もあり、歯周病はインプラント周囲炎のリスク要因の一つと考えられています。
歯が残っている方は、歯周病にならないように定期的に歯科医院を受診して歯のケアを受けるようにしましょう。
糖尿病
インプラント周囲炎のリスク要因となりそうな全身的な病気はいくつか示唆されていますが、科学的に認められているのは、今のところ糖尿病だけです。
糖尿病がコントロールできていない方は、体内のタンパク質と糖が結合した化合物がたくさん作られます。
これが血管壁や骨に付着することで、血管が詰まったり、骨への血液供給を邪魔したりして、骨の代謝異常を引き起こします。
インプラントの周囲も同様で、血管の流れが悪くなった上、骨代謝が悪くなり、インプラントの周囲の骨がダメージを受けると考えられています。
糖尿病の方は、内科をきちんと受診し糖尿病をしっかりコントロールしましょう。
喫煙者
インプラント周囲炎がどれくらい起こっているかの研究によりますと、インプラント周囲炎を起こした方の8割近くに喫煙習慣があったそうです。
喫煙は、血液供給や骨代謝、免疫力を低下させるため、インプラント周囲組織の健康が障害され、骨吸収が進みやすくさせると考えられています。
喫煙習慣のある方は、禁煙を試みてください。
禁煙グッズを使ってご自身で取り組むのもいいですし、医療機関の禁煙外来を受診するのもおすすめです。
まとめ
今回は、インプラントの寿命を左右するインプラント周囲炎について解説しました。
インプラント周囲炎は、放置しているとインプラントが抜けてしまいます。
インプラント周囲炎を防ぐこと、万が一インプラント周囲炎になってしまったら、早期に適切な治療を受けることがとても大切です。
インプラント周囲炎を防ぐには、インプラント治療後、定期的にインプラントの状態を歯科医院でチェックしてもらうことです。
当院は、インプラント治療後の予後も重視して診療に当たっています。
インプラント周囲炎について、ご質問や不安、相談のある方は当院にぜひお越しください。