こんにちは
インプラント治療にとって、インプラントを埋め込むなどの外科手術は必ず通らなければならない道です。
外科手術ですから、そこには”痛み”を伴います。
”痛み”を理由にインプラント治療に踏み出せない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、インプラント治療を不安に感じる要素のひとつである”痛み”を少しでも解消するための取り組みについて解説します。

麻酔の痛みへの対策

外科手術の痛みを和らげる方法は、麻酔ですが、これも痛みの原因となります。

麻酔の痛みの原因

麻酔で痛みを感じると聞くと、矛盾しているように思われるかもしれませんが、麻酔は基本的に歯肉への注射により行われるものなので、注射時の痛みが避けられません。

麻酔の痛みへの対策

麻酔の痛みを少しでも減らすための対策には、次のような方法があります。

表面麻酔

表面麻酔は、歯肉の表面の知覚神経を麻痺させる麻酔法です。
麻酔の注射をするところに、表面麻酔を施しておくと、注射の痛みを緩和することができます。
表面麻酔の方法は、現在、歯肉に浸透しやすい麻酔薬を塗る方法や表面麻酔テープの貼付が主流になっています。

痛点を感じにくいところから注射する

お口の中は、どこでもまんべんなく痛みを感じるわけではありません。
痛みに敏感なところがあれば、その逆もあります。
そこで、できるだけ痛みを感じにくいところにまず麻酔の注射を行います。
麻酔の効いた範囲ギリギリのところでまた麻酔の注射を行います。
麻酔の効いている範囲に麻酔の注射をするので、痛みがほとんどありません。
これを繰り返し、徐々にインプラントのところに近づけていくようにすると、注射の痛みを減らせます。

ゆっくり注入する

麻酔の注射の時、麻酔液をゆっくりと注入するのも、注射の痛みを和らげるのに効果的です。
電動麻酔器を使えば、麻酔液の注入速度を自在にコントロールできるので、電動麻酔器を使って局所麻酔をすれば、痛みを減らすことができます。

針なし注射器を使う

針のない注射器があります。
これは注射針を歯肉に刺して麻酔液を注入する代わりに、霧状にした麻酔液を歯肉に噴射して麻酔させる注射器です。
針を歯肉に刺さないので、痛みの少ない麻酔が可能になります。
針なし注射器で麻酔をした後、注射針のある通常の注射器で麻酔をすれば、痛みなく広い範囲を麻痺させることができます。

術後の痛みへの対策

インプラント手術は、手術中の痛みだけでなく、手術後の痛みもあるので、こちらの痛みへの対策も大切です。

術後の痛みの原因

インプラント手術後に痛みが生じるのは、炎症が原因です。

炎症とは

炎症とは、身体に何らかの変化を与えるさまざまな刺激に対し、身体が元の状態に戻そうとする反応です。
炎症を起こす原因は、細菌やウイルスなどの病原菌から、腫瘍まで実に多様です。
もちろん手術も炎症の原因になります。

手術で痛みが生じる原因

手術を受けるところには傷がつきます。
すると、血管が広がると同時に、血管の壁の細胞に変化が生じ、血液成分が血管外に滲み出します。
血管外に滲み出した血液成分の中には、炎症を引き起こす成分がたくさん含まれています。
この中に、プロスタグランジンなどの痛みを感じさせる発痛物質という成分があり、これが痛みを引き起こすと考えられています。
発痛物質の量は、手術から24〜48時間でピークを迎えるので、痛みもこの頃がピークとなり、それからしばらく数日かけて引いていきます。

術後の痛みへの対策

手術後に生じる痛みへの対策は次のとおりです。

痛み止めの薬

手術後の痛み対策の基本は、痛み止めの薬です。
通常、非ステロイド性消炎鎮痛薬が処方されます。
一般的には、飲み薬タイプを処方します。
一種類だけということもあれば、毎食後の痛み止めとそれでも痛い時の頓服ということで2種類処方されることも多いです。
痛みがとても強いときには、坐薬の痛み止めが処方されることもあります。
坐薬の痛み止めは、痛みを取る効果が強いだけでなく、効果が出るのも早いですし、胃痛の原因になることもありません。
非ステロイド性消炎鎮痛薬が使いにくい方は、漢方薬という選択肢もあります。
手術後の痛みに効果のあるのは、立効散という漢方薬です。
漢方薬は、食後に飲むと効果が2割ほど落ちるので、空腹時、すなわち食前に飲むのが効果的です。

冷やす

痛いとき、冷やすことを冷罨法といい、これも痛みを緩和する有効な方法のひとつです。
冷やすと、冷やしたところの血管が縮むので炎症の範囲が広がりにくくなり、そして神経の活動性が下がるため、痛みを軽くすることができます。
冷やし方は、ガーゼなどを10〜15℃くらいの冷たい水に浸して、固くしぼり、痛いところに当てます。

温める

冷やすのと反対に、温める方法もあります。
温める方法は、温罨法(おんあんぽう)といいます。
温めると、血管が広がり、血管の周囲に染み出した炎症性物質が吸収されやすくなり、炎症が引くと同時に、神経への圧迫も減るので、痛みが楽になります。
温めるのは、ピークを超えた後残っている痛みを和らげたいときが適しています。

まとめ

今回は、インプラント手術の痛みについて、痛みを和らげる方法を中心に解説しました。
インプラント手術の痛みは、主に、手術時の麻酔の痛み、手術後の炎症による痛みです。
いずれの痛みも緩和する方法があるので、必要以上に心配する必要はありません。
インプラント手術の痛みに対し、不安や相談のある方は、当院でぜひご相談ください。

恐怖心が強い方には静脈内鎮静法で眠っている間に手術できる方法もございます。麻酔の痛みも、手術の振動や音も感じません。居眠りをして起きたら手術が終わっている感覚です。
痛みが怖くてインプラント手術をためらっている方には静脈内鎮静法が大変おすすめです。