歯を失うと起こる変化
咀嚼機能の低下
歯を失うと起こる変化としてまず挙げられるのが、咀嚼機能の低下、すなわち食べ物を噛み砕く力が弱くなることです。
この変化は、特に奥歯を失った場合に起こりやすいです。
奥歯がなくなると、食べ物を細かく噛み砕くことが難しくなり、消化不良や栄養不足につながる可能性があります。
また、咀嚼機能の低下は、食事の楽しみを奪い、QOL(生活の質)の低下にもつながります。
他の歯への負担増加
歯を失う影響は、他の歯にも及びます。
数が減った歯で食べ物を噛まざるを得なくなるので、残された歯に大きな負担がかかります。
この影響は、失われた歯の隣接歯や対合歯にでやすいです。
これらの歯はそれ以外の歯以上に大きな力を過度の力を受けることになり、早期に摩耗したり、損傷したりすることもあります。
また、歯の位置関係のバランスが崩れ、歯並びや噛み合わせが乱れる原因にもなります。
顎の骨の吸収
歯の周りの骨は、歯槽骨といい、歯を支えるために存在しています。
歯がなくなると歯槽骨はいらなくなるので、徐々に吸収されてなくなっていきます。
歯を失ったままの放置による問題
周囲の歯の移動と傾斜
歯を失ったまま放置していると、周囲の歯が欠損部に向かって傾斜し始めます。
これは、歯の配列バランスを大きく乱すため、噛み合わせの異常や審美性の低下につながります。
特に、前歯の歯が抜けた場合、審美性に大きく影響します。
噛み合わせている歯が伸びてきたり、隣の歯が倒れ込んだりして、前歯の見た目を損なってしまうからです。
顎関節への影響
歯を失う影響は、顎関節にも及びます。
なぜなら、歯がなくなると咬合のバランスが崩れ、顎関節に負担がかかるからです。
抜けた状態を長期に放置すると、顎関節症や頭痛、肩こりなどの症状を引き起こす可能性もあります。
また、顎の運動パターンも変化しますので、口腔周囲の筋肉のアンバランスも生じます。
認知症との関連性
歯を失った影響は、脳にも及びます。
近年の研究で、歯の喪失と認知症の関連性が指摘されています。
歯を失うことで咀嚼機能が低下すると、脳への刺激が減少し、認知機能を低下させる可能性があるとされています。
また、歯の喪失は、社会的交流の減少や食事の偏りにもつながり、間接的に認知症のリスクを高めるとも考えられています。
歯を失った場合の対処法
ブリッジによる補綴治療
失われた歯に対する治療法のひとつは、ブリッジによる補綴治療です。
ブリッジは、失われた歯の両隣の歯を支えとして、人工の歯を固定する方法です。
比較的自然な見た目と噛み合わせ機能を回復することができますが、健康な歯を削る必要があるため、支えの歯への負担は避けられません。
部分入れ歯による補綴治療
複数の歯を失ったなら、部分入れ歯による補綴治療も選択肢のひとつです。
部分入れ歯は、ブリッジのように残存歯に接着しないので、取り外しできます。
ブリッジと比べて、残存歯を削らないので歯への負担が少ないメリットがありますが、違和感や安定性、食事中の使い勝手の面でやや劣ります。
インプラント治療
インプラント治療は、失われた歯の噛み合わせ機能と審美性を高い次元で回復できる方法です。
顎の骨に人工歯根を埋入し、その上に人工の歯を被せる治療法で、自分の歯のような自然な感覚が得られます。
また、隣接歯を削る必要がなく、顎の骨の吸収を防ぐ効果も期待できます。
ただし、人工歯根を埋め込む外科手術が必要で、治療期間が長く、費用も高額となります。
歯を失ったままにしておくと、さまざまな問題が生じる可能性があります。
咀嚼機能の低下や周囲の歯への悪影響、顎の骨の吸収など、長く放置することでより深刻な状態になってしまうこともあります。
歯を失った場合は、早めに歯科医院を受診し、適切な治療法を選択することが大切です。
ブリッジ、部分入れ歯、インプラントなど、それぞれのメリットとデメリットを理解し、自分の口腔内の状態や生活スタイルに合った方法を専門医と相談しながら決めていきましょう。
歯を失うことは、誰にでも起こり得ることです。
そのようなとき、適切な対処を行うことで、口腔内の健康を維持し、QOLの低下を防ぐことができます。
定期的な歯科検診を受け、歯の喪失を防ぐとともに、歯を失ってしまった場合は、早期の治療を心がけることが重要です。