ヒトの永久歯は、親知らずを含めれば32本、親知らずを含めなければ28本あります。
一生涯、1本も歯を失うこともなく過ごせる方もいらっしゃいますが、多くの方は少なくとも一度は抜歯を経験なさっています。
歯はどのような理由で失われるのでしょうか。

歯を失う主な原因

むし歯(う蝕)

歯を失う原因はたくさんありますが、中でも多いのが、むし歯です。
むし歯は、口腔内の細菌が食べ物に含まれる糖分を分解する過程で生成される酸により、歯の表面が溶かされることで発生する病気です。
むし歯が進行すると、やがて歯の神経まで到達し、激しい痛みを引き起こします。
むし歯が悪化すると、歯を抜かざるを得なくなることもあります。

むし歯(う蝕)

歯周病

歯周病は、口腔内の細菌が産生する毒素により歯を支える歯周組織(歯肉や歯槽骨など)に炎症を起こす病気で、むし歯と並び、歯を失う原因のトップに挙げられます。
歯周病の原因は、細菌です。
歯周病の原因菌は、プラーク(歯垢)の中にいます。
プラークが蓄積すると、歯肉に炎症を起こします。
これが歯肉炎で、歯周病の始まりを意味しています。
歯周病がさらに進むと、歯槽骨が溶けていきます。やがて、歯が動揺し出し、最終的には脱落に至ります。

歯周病

加齢による歯の損耗

歯は骨より硬いのですが、長年の咀嚼による機械的な刺激や、酸性の食品・飲料による化学的な溶解により、少しずつ磨耗していきます。
歯の磨耗が進むと、歯の欠けだけでなく、痛みも生じるようになります。あまりにも磨耗が進みすぎると、歯の喪失につながることもあります。

加齢による歯の損耗

外傷や事故

スポーツ中の事故や転倒などの外傷により、歯が折れたり、抜けたりすることがあります。
特に前歯部は、外傷を受けやすい部位です。
歯の損傷の程度が重度の場合、歯を残すことが難しくなり、抜歯となることもあります。

外傷や事故

歯を失わないための予防方法

適切な口腔ケア

歯を失わないために最も基本的な予防法は、口腔ケアです。
歯を守るのに最適な口腔ケアの方法は、毎食後の歯磨きと、少なくとも1日1回のデンタルフロスや歯間ブラシを使った歯の隣接面のケアです。
ていねいな口腔ケアは、むし歯や歯周病を防ぎ、歯を守ります。
そして、定期的に歯科医院を受診し、むし歯や歯周病など歯のトラブルを早期に発見してもらい、適切な治療を早いうちに受けるようにしましょう。

適切な口腔ケア

バランスの取れた食生活

歯を失わないようにするには、適切な食生活も不可欠です。
食生活は、歯の健康維持に大きな影響を与えるからです。
例えば、過度の糖分摂取は、むし歯のリスクを高めます。
その一方、カルシウムやビタミンDを十分に含む食品は、歯の再石灰化を促進し、歯の強度を高めます。
バランスの取れた食事を心がけることが、歯の健康維持の基本です。

バランスの取れた食生活

悪習癖の改善

歯の健康には歯に関係する習癖(くせ)も関係しています。
一例を挙げると、歯ぎしりや食いしばりです。
これらは、歯に歯に過剰な力をかけ、歯の磨耗や破折の原因になります。
このような歯に負担をかける習癖に気づいたら、積極的に改善に取り組むことが大切です。
必要に応じて歯科医に相談し、マウスガードなどの対策を講じることをおすすめします。

悪習癖の改善

スポーツ時のマウスガード装着

スポーツ時の外傷が原因で歯を失うことがあります。
スポーツ時の歯の外傷から歯を守るには、マウスガードが有効です。
マウスガードは、歯だけでなく、顎や頭部の損傷防止にも役立ちます。
特に、接触の多いスポーツや、転倒のリスクが高いスポーツでは、カスタムメイドのマウスガードを装着することが推奨されています。

スポーツ時のマウスガード装着


歯を失う原因には、むし歯、歯周病、加齢による歯の損耗、外傷、事故などがあります。
これらの原因を理解し、適切な予防策を講じることが、生涯にわたって自分の歯を維持するために不可欠です。

適切な口腔ケア、バランスの取れた食生活、悪習癖の改善、スポーツ時のマウスガード装着など、日常生活の中で実践できる予防方法は多岐にわたります。
これらの予防策を積極的に取り入れると、歯の喪失のリスクを大幅に低減することができるでしょう。

歯を失うということは、咀嚼機能の低下だけでなく、審美性や発音にも影響を及ぼします。
さらに、歯の喪失は全身の健康にも悪影響があると言われています。
自分の歯を大切にし、予防に努めることは、豊かな人生を送るための鍵です。
歯の健康について疑問や不安がある場合は、かかりつけの歯科医に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。